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2014年10月12日日曜日

宅地建物取引士


私は会社員時代、理工系出身の技術屋でした。概して技術屋は甲乙が現れる文書類は苦手の様でしたが、特に私は頭が痛くなるほど苦手でした。技師の時代は嫌いで良かったのですが、管理職になったと同時に取引先との契約書類に技術部門として検認が必要となり、これらの文書類との格闘が始まりました。

幸い歴史ある会社は自社を守るための仕組みが出来上がっておりましたので、検認者に私の様な不得手な者がいても大事に至ることはありませんでした。しかし末端の管理職時代はこれで済んだのですが、その後東京技術センター長を命じられ、今度はすべての書類に責任をもって検認しなければならなくなりました。私も「会社を守るため」(といえば聞こえは良いですが、実際は自分が重大なミスを犯さないため)苦手の克服にチャレンジすることを決意しました。とはいえその結果で目標達成(成果物を得る)があれば、学ぶ姿勢も変わってくると思い、司法書士、行政書士、弁理士などの資格取得を検討しました。しかし、試験が難しそうとか、分野が狭く専門的になりすぎる等の理由づけをし、これらを断念、宅建業法、建築基準法、民法をはじめとする各種法律を深堀せず学べ、苦手の克服ができ、持っていれば役に立つこともあるかも知れない資格として「宅地建物取引主任者」を目標としました。この時にはじめて「士」と「者」を認識したことを思い出します。

 平成十八年五月に私は全日本不動産協会湘南支部長として支部役員会に臨んでおりました。神奈川県県本部より平成十九年度国・県に対する予算要望をまとめるべく全支部に要望を提出する様指示があったためです。その席で行政と共に活発に活動している副支部長より関係資料閲覧等の権限を付してもらうためにも「士」にという強い要望が出されました、この要望を県本部の支部長・委員長会議に諮りましたが「時期尚早」と一蹴されましたが、自分もまだ宅建業の経験不足でこれを強く推すだけの認識はありませんでした。この頃の私には「士」というと弁護士、司法書士、税理士などが頭に在り、??という認識でした。彼はその後五年間同じ要望を出し続け、県本部では没になり続けていました。その間に士称を見つめてみると私の認識不足でいつの間にか沢山の士があるではありませんか。一方で宅建主任者は業法で続々と義務と責任が増え続け、消費者のニーズの変化で業務の範囲も拡がり、業務が複雑に高度になっている実態を再認識、神奈川県本部長就任時にこの問題を前進させようと決意しました。

 去る六月二十二日通常国会で改正宅建業法が成立しこの呼称変更が決まりました。残念ですが私の決意は決意だけで終わってしまいましたが、協会としてはこの呼称変更に伴い様々な環境整備が急ぎ必要になっていますので、今はこの一端を担わせて頂いております。

この改正は昭和三十三年に「宅地建物取引員」として取引主任者制度がスタートしてから五十六年ぶりの呼称変更です。
 
前述の通り、重要事項の説明の複雑化など責任が重くなっている実態に合わせ、一方で中古住宅市場が拡大しつつある中、主任者が中心となったワンストップサービス提供の必要性も高まり「士」とすることで地位向上をはかり、その実現を計るものと理解されます。

当然ながら業法では資質の向上が求められ、信用・品位を害する様な行為を禁止する「信用失墜行為の禁止」を新設、「必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない」という文言が追加され、更に「業者は従業者教育に努めなければならない」とする項目が新設されているほか、コンプライアンスが強化されています。詳しくは宅建業法平成二十六年六月二十五日法律第八十一号(未施行)を是非ご一読願います。

 現在は私共の協会で検討・立案中の法に合致した具体策が定まり、展開が始まります。その後には、時間を要すると考えますが、私は現在問題となっている空家問題改善のネックとなっている固定資産税支払者情報の入手、反社会的勢力及び団体の情報入手、その他安心安全な取引・消費者保護に重要となる各種情報が「宅地建物取引士」として入手可能となるべく努めます。

 今回の呼称変更は活躍している宅地建物取引主任者の業務内容にふさわしい呼称に改められたと思っています。

また、社会的地位の向上が得られますが、一方で相応しい資質が求められます。協会でも場を設定しますが、今まで以上に研鑚に励まれ、また従業者教育にも努められることを願ってやみません。

   

 冒頭に触れた元湘南支部副支部長にはこれを一番に伝え、一番喜んで貰える筈なのですが、彼は突然の病で倒れ廃業、音信不通なのが本当に残念でなりません。

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